ここ数年,データアーカイブやその数理的構造などに関して開催してきた会合(2024年の会合,2025年の会合,2026年初頭の会合)では,分野による違いはもとより,同一分野であっても組織ごとに目的が異なることにより,データの活用を目指したアーカイブ化に対するアプローチの違いが一層顕著になることが見て取れました。
つまり,分野ごと,組織ごとに,扱いたい知識を構造化したうえで,それぞれ異なる活用の目的に応じたデータフローの多様化を進めるためにも,それらを支える(情報)インフラストラクチャーに求められる要件も,組織ごとに異なっていくといえます。
本会合では,データ基盤が規模の大小によらず今後も多様化していくという認識のもと,とりわけインフラストラクチャーの観点から,将来的な高度化を見据えた抽象化のあり方などについて意見交換をしたいと思います。
なお,2025年後半に開始された取り組み「電力分野の現状を考慮したデータのアーカイブとその数理的構造」の一環として,長期的かつ安定的な運用性を強く求められるアーカイブの設計を取り上げての開催となります。
データアーカイブやデータ活用に用いるライブラリなどのソフトウェアと実装環境であるインフラとなるハードウェアの関係を整理する。状況に応じて異なる要件を踏まえ,次に挙げる分類を用いて議論する。(a) 利用者が多い重大なシステムでは高い可用性やリソースの増減の容易さを利用できるフルマネージドサービスが,また (b) 機械学習など高度なデータ分析を行う際にはライブラリと実行環境が組となったノートブック環境が,それぞれ有力な選択肢になる。またライブラリを構築想定しても,(c) ハードウェアを抽象化して捉える場合と,(d) 積極的に活用する場合が考えられる。分類ごとに事例を挙げながら考察していく。本講演では分類を提案し,特に (a) と (b) について取り上げる。
本報告では,JSPSデータインフラ事業の概要を紹介するとともに,東京大学史料編纂所の歴史情報処理システムSHIPSを事例として,研究データインフラの具体的な運用について検討する。SHIPS DBでは,史料の目録情報,テキストデータ,画像データ等を対象として,データの作成・蓄積・管理・公開・利用に関わる処理が行われている。本報告では,これらのコンテンツがどのようなフローで運用されているのかを整理し,あわせてCPU,メモリ,ストレージ等の計算機資源やシステム構成の観点から,歴史資料データベースを支える基盤の実態を示す。また,実験的な取り組みとして史料画像OCRにも触れ,画像資料を検索可能なテキスト資源へと展開する可能性と,そのために必要となる処理基盤上の課題について考察する。
データアーカイブやデータ活用に用いるライブラリなどのソフトウェアと実装環境であるインフラとなるハードウェアの関係を整理する。状況に応じて異なる要件を踏まえ,次に挙げる分類を用いて議論する。(a) 利用者が多い重大なシステムでは高い可用性やリソースの増減の容易さを利用できるフルマネージドサービスが,また (b) 機械学習など高度なデータ分析を行う際にはライブラリと実行環境が組となったノートブック環境が,それぞれ有力な選択肢になる。またライブラリを構築想定しても,(c) ハードウェアを抽象化して捉える場合と,(d) 積極的に活用する場合が考えられる。分類ごとに事例を挙げながら考察していく。本講演では (c) と (d) について取り上げ,議論を締めくくる。
ハードウェアの性質を強く意識したアプローチ,データアーカイブの体系化と探索性向上などを意識したアプローチ,着想や利用目的重視で様々な指向性を意識したアプローチなど,(情報)インフラストラクチャーへの目線は,目的に応じて大きく異なりを見せていく傾向にあります。しかし一方で,成熟が進むにつれて共通の話題が増え,分野間での知見の行き来がし易くなり,変化を促しつつの集約といった趣きを持つこととも捉えられます。このランチミーティングでは,現在までの変化を参加者間で話し合いながら,今後の課題に関して話し合えたらと思います。
データアーカイブという言葉が生まれるより遙かに昔からアーカイブされてきたデータが古典文学である。しかしデータ活用が叫ばれる今,古典文学というデータは必ずしも活用されていない。古典文学データ活用の一例として,古典和歌を分析した事例を紹介する。公開されているデータベースではわずかな記法の揺れや不統一があり,異文や重出もあるが,適切に前処理をすれば千年に及ぶ人々の関わりが生み出した文化的蓄積の豊かな実相が見えてくる。文化は連続的に変化し,時系列には向きがあり,しかし変化の方向は予測できず,個別の作品の影響力は偶然の要素に左右され,しかし影響力評価は時代によらず安定している。これらの分析結果は作品が模倣され改変されることで生まれると仮定したダイナミクスによって説明できる。データアーカイブとしての古典文学はこのように文化の進化についての俯瞰的な描像を与える。しかしこれが可能になったのは無数の先人たちが古典文学をただそれ自身のためだけに孜々として伝写してきたからにほかならない。
PyTorchを用いて作成した数字文字認識のための機械学習モデルを,GeoGebraから利用する方法について紹介します。FastAPIを利用する方法は,サーバが必要ですが比較的簡単に実装することが可能であり,プロトタイプ実装で有用です。ONNXを利用する方法は,サーバが不要でWebブラウザのみで実行可能で,WebGPUによる高速化も期待できます。ONNXはTensorFlow/Keras/PyTorchなどの異なる機械学習フレームワーク間で学習済みモデルを交換・再利用するために策定された機械学習モデル記述フォーマットであり,GPUを備えた大規模なハードウェア環境でモデルの構築と学習を行った後,そのモデルをONNX形式に変換することで,推論をWebブラウザで行う,といった運用が可能です。この講演では,これらの実装方法を解説すると共に,推論速度の比較実験結果について報告します。