昨年末の会合では,構造化したデータアーカイブの事後的利用拡大に伴う高度化や分野ごとに生じる課題の分化の様子が顕著に見えて来ました。事後的利用の拡大は,当初に想定しなかった利用を求めることから,情報の抽象的な取り扱いの高度化を進めると思われます。一方で,特定用途や視点に基づく情報であっても,用途・目的を問わないデータアーカイブ化の観点から数理的な深化も強めていく可能性があります。
本会合では,各分野の関係性において深く掘り下げて行きたい話題(各分野の状況の詳細把握に繋がる題材),抽象度の高度化に対応していく視点の獲得(数理的な側面としての抽象度要求の把握)など,データアーカイブに求められる広がりと高みの双方を意識しつつ,意見交換を重ねて参りたいと思います。
この発表では,とくにトイモデルと呼ばれるような理論研究時に,研究者が行っている思考を事例を基に説明する。トイモデルでは,データに基づく現象を比較的単純な仕組みで再現できることを目指す。研究実施の前段階として,多くの可能な理論モデル中から,特定のモデルや理論が選択されている。そのような前段階の調査や試行過程は,最終的には論文に記述されないため,狭い研究者コミュニティの外には伝わりにくいものである。今回の発表では,adaptive Kuramoto model (TA & T. Aoyagi, PRL 2009)と,組み合わせホッジ理論による人流データ分析 (TA, S.Fujishima & N.Fujiwara, Sci Rep, 2022) を題材に,前段階の調査や試行過程を説明する。
昨年の会合では,複数分野を扱うデータアーカイブと,それらのアーカイブ内でのデータ循環や分野横断的な複合利用に焦点を当てて議論を行いました。現在は,これらの仕組みを安定的に運用しつつ,アーカイブ内でのデータ循環をさらに活性化させることが重要な課題と考えています。本セッションでは,こうした活性化に向けた現在の試みを紹介します。特に,取り扱う分野ごとの状況や特性を踏まえたアプローチの違いや,数理科学的知識と文化的側面の強い知識を同じアーカイブ内で扱う際の工夫について話したいと思います。
時間が許せば,複数回に分けて開催している「アニメ分野の制作資料の活用やデータアーカイブの取り扱い」に関する会合の様子(第1回,第2回)なども紹介し,手作業中心で進んで来た分野のアーカイブ化について多少触れたいと思います。
これまでの会合では構造化のための自然言語処理,蓄積・表現のための知識グラフなどについて取り上げた。今回は活用の視点からどのような構造化が効果的であるかを議論したい。
ニュース記事には時系列的な話題が混在しており,ニュース記事間は話題を示す曖昧な表現によって接続され,学術論文における引用構造のようなネットワークを形成している。読者となるヒトは断片化された話題を,自身が持つ知識と統合するなどして新たな知識とすることになるが,これは不慣れな初学者にとっては複雑である。
そこで意味的拡大縮小(semantic zoom)を用いた支援の可能性について検討する。事前に用意されたレイヤーだけではなく,その中間となるレイヤーを構造化した情報をもとに大規模言語モデル(LLM)で生成させることで,なめらかな拡大縮小を実現することに期待している。取り組みを紹介するとともに一般性について議論したい。
近年の情報化によって食に関するデータが急増している中,それを活用したfood computingやcomputational gastronomyと呼ばれる分野が盛んに研究されはじめています。本講演では,特にレシピデータの扱い方に着目して,以下の研究を取りあげてサーベイ的に紹介します。
また,今後の発展課題も紹介します。
本セミナーでは,実務で扱うさまざまなデータの種類や直面する課題について解説するとともに,実際に取り組んだ課題解決の事例をご紹介します。数理科学の理論が,ビジネスや技術開発の現場でどのように応用され,成果を生み出しているのかをわかりやすくお伝えします。
電力はICTをはじめとする多様な社会活動を支える基幹インフラであり,その多様な側面を持ち得ているデータについての考察は,学術的な観点からも興味深い分野横断的な数理的構造の探究につながる可能性があります。そしてそれらは,中期的にはその基幹そのものを改善する上で,より良い気付きをもたらすことが期待されます。しかし一方,これらのデータは長期的な蓄積を通じてアーカイブ化されて来たとはいえ,将来的な分野横断的なデータアーカイブの応用や知見の獲得に向けた検討は,数理的構造化の模索の余地としてもまだまだ始まった段階に過ぎないと考えられます。
本セッションでは,電力分野におけるデータの構造化とその数理的側面に着目し,2025年後半に開始された取り組み「電力分野の現状を考慮したデータのアーカイブとその数理的構造」の初期段階での様子をご紹介します。その上で,今後のセミナー企画に向けて,応用可能性や構造化の方向性についてディスカッションを行います。
構造化したデータアーカイブの事後的な利用拡大に伴い,様々な分野間で発想や概念の往来が活性化し,課題の共有と分化が加速していると考えております。また同時に,アーカイブを支える技術面の推進により,こうした展開をさらに促進する流れも生まれて来ていると思われます。このセッションでは今回の集会全体を振り返り,課題の共有と分化が進む中でのアプローチの可能性についてディスカッションを行いたいと思います。