2025年後半に開始された取り組み「電力分野の現状を考慮したデータのアーカイブとその数理的構造」の一環として,長期的かつ安定的な運用性を強く求められるアーカイブの設計を取り上げての開催となります。
ここ数年,データアーカイブやユースケースに関する過去の会合(2024年の会合,2025年の会合)では,各分野の関係性や抽象度の高度化への対応など,データアーカイブに求められる広がりと高みを意識した課題に関して話し合って来ました。
そこで今回は,電力をはじめとする基幹インフラに視点を移し,実際にデータを活用する目的の学術的・研究開発的な側面と,医療などの機微情報を扱う諸分野の現状を特集することにより,基幹インフラの可能性や発展性に焦点を当てつつ意見交換をしたいと思います。
計算機代数を用いることで,数理モデルに現れる方程式などを厳密に取り扱うことが出来ます(数値計算とは異なり,大規模問題への直接適用を行うのではなく,理論的な検証や前処理などでの利用が主となります)。この講演では,電力潮流解析を計算機代数の主要な理論であるGroebner基底を用いて行うことを取り扱っている論文についてサーベイ的に取り上げて紹介することを中心に,基幹インフラと計算機代数について考えてみます。
本講演では,非医療業界から参入した数理・情報技術者の視点から,電子カルテ情報の統合と高度な解析基盤構築における技術的課題,およびその解決に向けた実践的アプローチを論じる。現在,医療現場におけるデータは,ベンダー独自のデータ構造や非構造化データの混在により,情報のサイロ化が著しい。次世代標準規格であるHL7 FHIRの導入によってデータアクセスへのハードルは低減しつつあるが,それを利用可能なデータとして再構成する技術的障壁は依然として高い。計算機代数・情報工学の知見を用いた「データの標準化」と「相互運用性の確保」を主眼に置いて,厳格なセキュリティ要件とデータパイプラインを両立させた設計・実装について,実際の取り組みを交えて詳説する。
数論研究においてLMFDB(The L-functions and modular forms database)のようなデータアーカイブの育成と活用が進んでいる。2017年ごろから,これらデータアーカイブと機械学習を活用することで,数論上の新しい予想などを生み出す活動が起こってきた。さらにLLMと数学ソフトウェアと証明支援システムを支援環境として使うAI for Mathの取り組みも始まってきた。本発表では,発表者が参加している国立情報学研究所で開発・運用しているRDC(Research Data Cloud)の紹介と今後AI for Scienceの推進に寄与できるように高度化させる次世代RDC構想の紹介から始め,その具体的イメージを共有するために「AI for Math手法による素数の偏りに関する系統的研究」について説明する。その後,AIとデータアーカイブの活用について議論させていただければ幸いです。
ランチミーティングとして,将来における今後の企画に向けて気軽に話し合う目的で開催します。
ICTの普及により,様々な分野において公開データは増えていると思われますが,計算機科学や関連する様々な技術に明るい人材がどの分野でも不足しがちと一般に考えられているかと思います。しかしながら,それら公開データの活用に際しては,データガバナンスだけでなく,アルゴリズム構築などの意味で計算機科学や様々な分野の状況に即してアプローチを模索することとなります。このセッションでは,現在までの所感を踏まえて,今後の課題に関して話し合えればと思います。
時間が許せば,KSSにて申請者に公開してきた位相幾何関連の様々な計算をパッケージ化したもの(数学の様々な分野や異分野向け)を通して得られた知見も紹介したいと思います。(AIとの対比として)計算機実験という用途ではなく,形式的な理解や研究上の気付きとしてセミナー内外での議論へと活用されてきた状況を振り返り,データアーカイブと研究利用の多様性に関しても話し合えたらと思います。
知識グラフは知識や概念を柔軟に表現し活用を想定するための方法として注目されている。長期的なデータアーカイブの拡充を踏まえると,経時変化への追従で求められる柔軟さは特に重要性が高いといえる。知識グラフを構成する要素を抽出するための自然言語処理などの情報抽出,知識を整合性を保ちつつ体系的に蓄積するためのセマンティックウェブ技術を取り上げ,検証結果を合わせて報告する。また意味的拡大縮小への適用事例などを交えて,これまでの会合での議論を整理する。
これまでの議論を踏まえ,データアーカイブの長期保管と運用のあり方を検討します。特に,研究開発を支える基盤としての役割に着目し,現状の課題を整理。運用の現場での気づきを共有しながら,次なるステップに向けた重要事項を再考し,今後の展望について皆様と丁寧に議論を深めたいと考えております。